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ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち [映画/プレビュー]

こんな時間にパソコンの前に座るのって、とても久しぶりな気がします。近頃は、帰宅するとなんだか食事をしてすぐ眠る、というような生活。でも、今日はちょっと違いました。出張で、午後から名古屋市内に出る機会があったので、遅くなることはわかっていたのですが、映画のレイトショーを観てきたんです。理由は、もう今日しかきっと観る機会がないかな、って思ったから。

この映画は、数年前に亡くなったドイツの振付家、ピナ・バウシュの偉大な軌跡にふれながら代表作品の見どころがギュッと凝縮されたもの(加えて、3D作品)。流れは、出演ダンサーがピナについての思い出を語りつぐというものですが、その言葉の1つ1つが作品映像を深く豊かに彩ります。生前、ピナはダンサーへ語りかけることで唯一無二の作品を紡ぎだしましたから、この映画ももしかしたら同じ構造になっているのかも知れませんね。

とにかく、ぜひご覧いただきたい作品だと思いました。ピナ・バウシュの作品をご覧になっていない方でも、作品の意味するところが少し分かりづらくても、きっとどこかに深く惹かれる部分があると思います。それが、ピナ・バウシュ作品の魅力だと思っています。


あえて、映画の内容に踏む込むことは止そうと思うのですが、ラストシーンでピナ・バウシュが残した言葉について印象深く感じましたので、書いてみたいと思います。

映画のラストシーン、ピナの声でこんな言葉が流れます。
「踊って、踊って。自分を見失わないように。」
一般的に、「踊って踊って」という状態は無我夢中な状態だともいえます。ですから、この言葉を耳にしたとき、何か違和感を覚えました。そんなときこそ、自分を見失っているのではないか、そう思ったからです。

けれども、あえてピナがそう言ったということを踏まえて考え直してみて、愕然としました。冷静に保たれている自分とは、いったい何者なのか。それは、いつ、誰が規定した自分なのか・・・。人は社会という環境に自分を適合させて懸命に生きています。それは大切なことではありますが、もしかしたら本来の自分らしさは、そこにないかも知れません。いつ、誰によって、どう規定されたかもわからない自分を保つためにいのちを続けるのではなくて、踊って踊ってただ夢中になっているそのときこそが、本当のごまかしのきかない自分がいるのではないか、それをピナは言いたかったのではないか、そんな風に考えたんです。・・・ああ、まったく、またヤラレタなあ、そんなことを感じました(笑)。もちろん、これは私の個人的な解釈ですけれども。


良い作品は、鑑賞者の脳に傷をつけるものだと、個人的に考えています(もちろん、それは良い意味で)。その傷を埋めようと、人はまるでアコヤ貝が真珠を生み出すときのように、懸命に傷を埋める何かを考えようとします。そうすることで、人は自分の中に生きることの宝物を蓄えていくように思います。この作品も、そうではないかな、なんて思います。

個人的な趣味が強いかも知れませんが、とても良い作品だと思います。名古屋地区の方は、ぜひ、ご覧になってみて下さいね。他地域の方は、まだご覧になる機会があると思いますので、日程があえば、ぜひ。

また、この映画の好評を受けて、別の映画(『夢の教室』)も封切られていますので、ご紹介しておきますね。これも、観に行こうと思います。


ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち公式HPhttp://pina.gaga.ne.jp/top.html

 ■名古屋は109シネマで上映:http://www.109cinemas.net/

夢の教室公式HPhttp://www.pina-yume.com/index.html


□これまでに書いたレビューの中から

『私と踊って』 http://www.dance-times.com/archives/2730577.html

*かなり主観的で個人的で、且つ理論も飛んでいて恥ずかしいのですが、作品への愛はいっぱいです(笑)。
『カフェ・ミュラー』 『春の祭典』  http://atl-since07.blog.so-net.ne.jp/2006-12-23-10
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映画『ハーブアンドドロシー』 [映画/プレビュー]

映画をあまり見る習慣がなくて、そのためか映画に関する情報にアンテナが立っていないのですが、先日朝のNHKニュースでステキな映画の紹介があってウキウキしています(笑)。アート好きな映画ファンの方ならご存知の方が多いのかも知れませんが、ある老夫婦のドキュメント映画『ハーブアンドドロシー』は、アートを支援したいと考える人にとっては本当に魅力的な作品だと感じました。

ちょっとエゲツナイ話になるかも知れませんが(方言が過ぎる?:笑)、日本でアーティストがアーティストを職業として生活していく(収入を得て生活をしていく)ことって本当に難しいと感じています。この映画はそこに一石を投じてくれるのではないかな、なんて感じます。アート鑑賞者の成長が不可欠な社会の到来・・・ATLの仕事へのニーズも高まってくるのではないかと身勝手に感じています。。


公式HPhttp://www.herbanddorothy.com/jp/

■名古屋での上映スケジュール:名演小劇場 1/15(土)~1/28(金)
|11:35|15:25|19:15|(87分)


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*映画とは少し外れますが、日本国内にもこんな活動をしている団体がありますよ。

ONE PIECE 倶楽部:http://www.one-piece-club.jp/

*あと、会期は間もなく終わってしまうのですがギャラリーではアート福袋を扱う試みもあります。

ギャラリーAPA/アート福袋(Fine room):http://www.fuji.bpl.jp/apa/index.html
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ベンダ・ビリリ!-もう一つのキンシャサの奇跡- [映画/プレビュー]

先週末、知り合いの方のお誘いでスタッフ・ベンダ・ビリリというアフリカのバンドのライブコンサートに行って来ました。まったく前知識なく出かけたのですが、車椅子に乗ったシンガーやギタリストが演奏していて驚きました。さらに、それ以上に彼らの生み出す音のハッピーさと、歌詞の中にあるアフリカ・コンゴの混乱した状況に驚かされました。会場は最後にはスタンディングオベーションが起こるほど盛り上がっていました。彼らはポリオで足を失い、路上生活を余儀なくされていたそうですが、音楽を通じて立ち上がってきた人たち・・・。辛い状況を積み重ねてきたのに、あの明るい音楽は本当に奇跡だと感じます。そんな彼らの物語が映画化されているんです。


公式サイトには

2人の監督は「これは音楽映画ではない」と言う。コンゴ社会、ひいてはアフリカ全体の社会的な状況の中で、外側に追いやられ、貧しさに喘ぎ、路上で暮らしている何百万人もの人々のための映画なのである。同時にこの映画は、父と息子の物語でもある。ビリリは、ストリート・チルドレンたちの親代わりの存在だ。特に、“パパ・リッキー”と慕われるバンドのリーダーと、彼が拾い上げた、音楽の天才であるストリートの子・ロジェとの絆は観客に大きな感動と共感を与えるだろう。スタッフ・ベンダ・ビリリは、彼らの歌う歌詞からも伝わるように、いわば、「ストリートに暮らす人々のスポークスマン」。そしてそれは、決してあきらめない、という勇気と希望の物語である。

と紹介されています。
彼らの音楽をたっぷりと味わいながら、明るく力強い音楽にこめられた想いを感じさせられる映画だと思います。



ベンダ・ビリリ!-もう一つのキンシャサの奇跡-:http://bendabilili.jp/movie/index.html
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